原稿作成完全ガイド「CMYKの話」

CMYKのおはなし

「CMYK」という単語を聴いたことがあるでしょうか?

今回は印刷とデジタルの色の違いについてのお話です。刷り上がったチラシをみて、「なんだかパソコンで見ていた時と色が違うなあ」と思ったことはありませんか? 一部の専用モニターを覗いて、実はモニターで見ている色と印刷する色は違っています。

モニターで見ている色はRGBでできている

 モニターに映る画像は、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の3つの色を混ぜ合わせることで作られています。そのため、頭文字を合わせてRGBと呼ばれています。いわゆる光の三原色です。

 光は電磁波の一種です。電磁波には短いガンマ線から、長い電波までいろいろな波長があり、その中で人の目の細胞が色として捉えることができる波長を可視光線といいます。一番波長の短い紫から、青、水色、緑、黄色、オレンジ、赤と虹の順番にグラデーションを描いています。

 実は人の目はこの波長のうち3つだけしか感じることができません。赤色を感じる「L錐体」、緑色を感じる「M錐体」、青色を感じる「S錐体」の3つで、これが上記のRGBに対応しているわけです。

 目は大変高性能なので、私たちが見ている色すべてをモニターで再現することはできません。そこでどうしてもここからここまでという区切りが必要になります。この区切りを「色空間」と呼びます。

 しかし、スマホやモニター、ビデオを作っている会社がそれぞれ勝手にここからここまでと独自の色空間を決めてしまうと、こちらのスマホで見たときの赤色と、あっちのテレビで見たときの赤色は全然違う! ということになってしまいます。

 そこで、モニターで再現する色を統一するために国際電気標準会議(IEC)が定めている標準規格が、sRGBです。モニターのスペック表などで「sRGBカバー率」という言葉を目にすることがあると思います。

 sRGBでは、3色がそれぞれ0~255の256色に分かれています。例えばモニター上で赤色をだそうと思ったら「R:255,G:0,B:0」となります。色の組み合わせは、256×256×256=16,777,216通りあり、sRGBカバー率が高いモニターほど、この約1677万色を正確に画面上で再現できるということになります。

印刷の色を決めるCMYK

 ここからは印刷の話です。いわゆるフルカラーと呼ばれる4色刷りの色は、CMYKと呼ばれています。これはシアン(Cyan)、マゼンダ(Magenta)、イエロー(Yellow)、ブラック(Key Plate)の4色の頭文字を合わせたものです。マゼンダ、イエロー、シアンは「色の三原色」と呼ばれる基本的な色です。

 印刷技術は木版や石版など古い歴史を持っていますが、4色印刷が使われるようになったのは20世紀に入ってからです。当初はシアン、マゼンダ、イエローの3色で3色刷りとして使われていましたが、完全な黒にはならないため、ブラック(Key Plate)がキーになる色として追加され、今の4色刷りになりました。印刷屋さんでは「スミ」と呼ばれることが多いです。

 光の三原色は3つの色を重ねると白くなりますが、水彩絵の具を洗っていると、筆洗箱がだんだん黒くなっていくように、インクは混ぜるとどんどん色が濃くなってしまいます。

 混ぜれば混ぜるほど色が薄くなる光のような混色を「加法混色」、混ぜると黒くなっていくインクの混色を「減法混色」と言います。このような性質の違いから、4色分解では明るくて鮮やかな色を出すのが、モニターよりも難しくなります。

 そのため、RGBで描いた絵や写真をCMYKに変換すると、表現できない明るい色や色味の強い色がCMYKで再現可能な色に置き換えられしまい、全体的に暗く、くすんだ印象になってしまうのです。逆にCMYKでちょうどいい色味に調整してある絵を、カラープロファイルなしでsRGBの色空間に放り込むと、RGBの色に自動的に置き換えられてしまい、ビビット過ぎるどぎつい色味になってしまうことがあります。

色を合わせるために何をすればいいのか?

1.最初からCMYKで作る

 印刷が前提のものなら、最初からCMYKで原稿を作ることで、予想しない色のくすみを防ぐことができます。ウェブ用に使う素材などは、RGBに変換したうえで色を調整すればCMYKでは難しい輝きや透明感を作ることも可能です。

 illustratorはデフォルトがCMYKなので失敗しづらいですが、フォトショップは新規ファイルを作る時に注意したいです。線画が終わった段階で一度確認する癖をつけておけば、安心できますね。

2.カラーマネージメントができるモニターがあると確認しやすい

 しかし、印刷とモニターの色がそんなに違っているなら、どうやって調整すればいいの? と思いますよね。プロの現場では、カラーマネージメントモニターという、印刷の色を画面上で再現してくれるモニターが使われています。また、自然光に近い色温度のスタンドを使って、なるべく実際に出力したものとモニター上の色味が変化しないよう調整しています。大きめの4Kモニターなら、A3やB4を原寸大に近いサイズで表示して作業をすることも可能です。

 とはいえ、プロフェッショナル用のカラーマネージメントモニターはかなり高額なので、あまり一般のおうちで使うことはないかもしれませんが、最近は10万円以下の安いモニターも増えてきています。かくいう私も、自宅でのデザイン仕事が増えてきた時代に、モニターに表示される色と印刷物のあまりの違いに絶望し、祈るような気持ちで色調整することに疲れて、清水の舞台から飛び降りる気持ちでEIZOさんのColorEdgeを買いました。

3.入稿後の色校で印刷される色を確かめる

 CMYkに変換して入稿するなら、入稿前に一度自宅のプリンタで出力してみることをおすすめします。プリンタは、レーザーでもインクジェットでもオフセット印刷よりも色味が鮮やかになりますので、もし、プリンタで出して地味に見えるなら、印刷ではもう一段階地味になるかもしれません。

 一番確実なのは、色校正を出すことです。本機校正と呼ばれる本番環境の校正は高額ですが、インクジェットのデジタル印刷機校正であれば、かなりコストを抑えることができます。大切な印刷物なので、あとで後悔がないようしっかりチェックしておきたいですね。

執筆者紹介

石井 聡

テゴ代表。ライター兼デザイナー兼ディレクター。タコとイカが好きです。

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